ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-704
*藤井芳一,金子信博(横浜国大院・環境情報)
土壌は,陸上生態系を支える基盤となる重要な生態系機能を有している.土壌の生成と維持には土壌中の生物の働きが必須である.つまり,汚染物質などの影響が土壌生物に及ぶと,土壌の生態系機能の低下に結びつく.ミミズのような大型土壌動物は,団粒形成などを通じて土壌構造を改変し,それに伴って栄養塩の挙動も変化する.同様に,汚染物質の挙動も変化させる可能性がある.そこで,団粒の存在の有無によって銅の挙動に影響があるのか,また,汚染した土壌において団粒が形成されることによって銅の挙動が変化するのかを検討した.土壌の毒性試験で国際的にもよく用いられるシマミミズ(Eisenia fedita)を用いて,糞団粒を採取し,生物摂取可能な画分量を銅の挙動変化の指標として,2週間の変化を実験的に比較した.団粒の機能は様々な観点から研究が進められつつあるが,汚染物質の挙動に関して実施された例はほとんどない.なお,野外土壌の調査において,乾式のふるいわけによる2-5mm径の土壌を団粒,2mm以下の径の土壌を細土として区分したところ,団粒は細土よりも生物摂取可能な易溶態の銅の画分量が少なく,生物の摂取は困難な難溶態の銅の画分量が多かった.このことから,団粒は,銅の生物摂取可能性を低下させる働きがある可能性が示唆される.栄養塩と同様に,生物にとって摂取可能な画分が変化するとすれば,土壌中の汚染物質の全含有量が同じでも,団粒の有無によってその土壌の持つ毒性が変わることになる.この点から本研究は,土壌汚染の生態リスク評価の際の重要な知見を提供することになるだろう.