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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-714

常緑広葉樹二次林における流域レベルでの純生産の推定

*宮田義規(宮大・農),上村直之(宮大・農),高木正博(宮大・農)


森林の炭素固定能力を評価するうえで、どのコンパートメントにどれほどの炭素が蓄積されるのかを明らかにすることは重要である。しかし今日、炭素の循環を開放系としてとらえ、森林生態系を構成する大気−森林−河川を包括して研究した例は少ない。

そこで本研究では、生態学的な手法をもちいて宮崎大学田野フィールドの小流域に成立する常緑広葉樹二次林の森林生態系純生産量(NEP)を推定し、大気から森林への炭素蓄積量、そして河川への流出量を明らかにする。本調査地1haは2004年からリタートラップによるリターフォール観測と、DBH5cm以上の胸高周囲長の計測が行われている。この胸高周囲長と2008年に行われた伐倒調査から求められた相対成長式を用いて樹木の幹枝および葉の増加量を求めた。また求めた1年間の地上部増加量と、イングロースバッグ法によって求めた地下部の成長量、枯死木(CWD)の増加量、リターフォールから純一次生産量(NPP)を求めた。

NEPは、NPPから従属栄養生物の呼吸量(Rh)と河川への炭素放出量(Dc)を差し引くことによって求めた。Rhは調査地で土壌呼吸の空間分布、季節変動を求めた後、根を除去した区の呼吸量の測定を行い、試験地土壌全体の年間従属栄養生物呼吸量を推定した。また枯死木の分解呼吸量は枯死木現存量を用い、分解呼吸と気温の関係から推定した。Dcは渓流に設けられた量水堰でトラップされた落葉落枝などの有機物量と採水された渓流水の溶存炭素量から推定した。

2006年から2007年のNPPは約10Mg C ha year-1、NEPは約1Mg ha year-1と推定された。


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