ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-724
下田星児(農研機構・近中四農研)
広島県福山市で作物栽培を行っていた圃場を非耕作状態にし、2年間の植生動態・土壌炭素量・δ13Cを調査した。草刈は一回目を5月、二回目を8月に実施し、草刈後に刈った草本を地面に残す区(草刈(残))と、圃場外へ取出す区(草刈(取))を設定した。植被率×草丈とバイオマス量の相関を調べた結果、イネ科雑草群落では線形回帰の場合に相関が高く(R2=0.86)、キク科雑草・マメ科雑草群落では累乗近似を行った場合に相関が高く(R2=0.83と0.90)、これらの回帰式を元にバイオマス量を推定した。水田跡地の非管理区では、1年目にヒメムカシヨモギ・セイタカ等の群落が形成されたが、2年目にはセイタカアワダチソウが優占しバイオマス量の80%を占めた。水田跡地の草刈管理区では、1年目はタイヌビエ・アゼカヤ等のイネ科の水田雑草が優占したが、2年目にはセイタカアワダチソウのバイオマス量が最も大きくなった。草刈(取)の方がイヌビエ・スズメノヒエを中心としたイネ科雑草の優占率が高く、セイタカアワダチソウのバイオマス比率は40%となった。水田跡地の地上部バイオマス量だけを見ると、草刈管理区の方が大きいが、非管理区は地下部バイオマス比率が高いため、合計のバイオマス量では草刈(取)で924 g m-2、非管理区で1114g m-2となった。畑跡地では、1年目には草刈管理を行わなくてもメヒシバを中心としたイネ科雑草優占へ移行したが、2年目は草刈管理区ではメヒシバが最も多く、非管理区ではヒメムカシヨモギが優占した。
放棄期間1年の0-30cmの土壌炭素量は、水田の草刈(残)区のみで増加した。高頻度な有機物供給が増加の要因の可能性があるが、畑跡の土壌炭素量はいずれの区でもは減少しており、より長期間の調査しなければ傾向は明確にならないと考えられる。また、δ13Cには処理区間で有意差は生じず、-0.4から0.2‰の変化であった。