ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-732
中原治(北大農), 花田健太郎(北大農), 竹内史子(北大地環研), 永田修(北農研), 杉戸智子(北農研), 高橋正通(森林総研), 波多野隆介(北大農)
温帯林は一般に窒素制限であるが、黒ボク土(火山灰土壌)は例外かもしれない。黒ボク土は、リン酸吸着能の極めて高い、非結晶性のケイ酸アルミニウム(アロフェン・イモゴライト)を主要なコロイド粒子としているからである。そこで、札幌市内にある、黒ボク土に立地するカラマツ人工林(札幌市白旗山都市環境林)で、養分制限(窒素制限か?リン制限か?)を調査した。
調査用プロット(30 m四方)は、東西2 km南北3 kmの範囲内に、28地点設けた。可給態リン(Bray-P)は17〜27 mg/kgで、1.6倍の変動を見せた。
NP比は、カラマツの生葉で11〜23、葉リターで13〜47の範囲にあり、可給態リン(Bray-P)と負の相関を示した。地上部純一次生産量は、立木密度が高く、窒素無機加速度が低く、生葉のNP比が低い地点で高かった。リンと窒素の回収効率は、生葉のNP比が高くなるほど上昇した。リン利用効率(カラマツの葉リターのP含量の逆数)も、生葉のNP比が高くなるほど上昇した。しかし、窒素利用効率は生葉のNP比と有意な関係を見せなかった。次いで、数地点でRoot ingrowth-core法を試した。生葉のNP比が20を超える地点では、窒素施肥よりリン施肥したコアへの根の侵入量が高かった。一方、生葉のNP比が15未満の地点では、窒素施肥したコアへの侵入量が高かった。この結果は、窒素制限の林分からリン制限の林分まで、土壌のリンの可給性に応じて、幅広い養分制限の林分が存在する事を示唆する。