ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-738
*三島慎一郎・秋山博子・八木一行・神山和則(農環研)
はじめに:化学肥料や堆肥などの有機物による窒素の過剰な施肥は地下水の硝酸態窒素汚染、温室効果ガス(亜酸化窒素)の発生などの環境負荷を与える。そこで都道府県でのポテンシャルとしての溶脱窒素濃度、亜酸化窒素発生量を推定し、これらを統合した環境指標を策定した。
方法:農業生産に伴う窒素フローのフレームワークを設定し、各種統計情報と実態調査結果から、都道府県別に窒素フローを算定した。余剰窒素が土壌浸透水に溶け出した場合の窒素濃度を算出した。IPCCのTier 2の方法で亜酸化窒素発生量を算出した。算出は1990年、1995年、2005年に関して行った。政府公開データから2000年から2005年の間で観測井戸が水質基準を超える割合(超過率)を都道府県別に求めた。
[結果と考察]窒素濃度は1995年に関して7.0mg/L(最大23.4mg/L・最小1.4mg/L)であった。都道府県別超過率は5.6%(最大24.5%・最小0%)で、窒素濃度の間には有意な正の相関(r=.593, p<0.1%)があり、超過率=0.634×窒素濃度-0.606の関係にあった。これは窒素濃度を1.0mg/Lの時超過率は0%となることを示す。2005年に関しては6.0mg/L(最大25.1mg/L・最小1.0mg/L)であった。亜酸化窒素の発生量も農業生産の構造によって大きく異なり、1990年に8.5kgN2O/ha(最大27.7kgN2O/ha・最小3.3kgN2O/ha)、2005年に8.0kgN2O/ha(最大32.0kgN2O/ha・最小2.7kgN2O/ha)であった。減少は化学肥料の施用と家畜の飼養が減った事による。これらから超過率0%、N2O発生1990年比6%減を目標として、2005年に関してTarget to distance法により環境負荷の単一環境影響指標を算出する事を試みた。