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ESJ56 シンポジウム S07-4

鳥類からみた群集構造「サシバの採食と水田地帯の景観利用」

東 淳樹 (岩手大・農)


サシバ Butastur indicus は東南アジア,南西諸島などの温暖な地域で越冬し,夏季に日本の里山に渡来し繁殖する東アジアに生息する中型の猛禽類である.繁殖地の環境は,水田と森林が組み合わさった谷津田が卓越した里山地域であることが多い.近年,生息数が著しく減少しており,2006年に環境省鳥類レッドリストにより絶滅危惧II類(VU)に指定された.本種は小型哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,昆虫類などの里山に生息する多種多様な小動物を食物としており,その中でも特に両生類,爬虫類,昆虫類の利用個体数割合が高い.これらの小動物が一年中豊富に生息していると考えられる南の温暖な地域ではなく,なぜ日本の里山地域に渡ってきて繁殖するのかは現在のところ不明であるが,その裏には,里山で繁殖することによるメリットが隠されていると考えられる.

本種は,電柱や木の梢などにとまり,辺りを俯瞰して地面や樹冠などで見つけた小動物に襲いかかる採食行動をとる.育雛期前半にあたる5月中旬から6月上旬にかけては,水田や畦などの開けた地面で採食するが,育雛期後半には,林の樹冠や林内に採食地がシフトする.これは,本種の採食動物の発生動態と採食地点の植生の草丈や密度と関係している.また,本種は採食に利用する水田に面した林の中のおもに針葉樹に営巣する.採食動物が比較的小さく,また給餌回数が1日に100回前後と多い本種の給餌生態からみて,採食地と営巣地が近接していることは好都合である.このように,里山の景観構造に順応した本種の採食行動や採食地および営巣地選択性や,本種の育雛期間と採食動物の発生動態のマッチングなど,本種の繁殖と里山景観の構造およびその機能との関係には強い結びつきがあることが少しずつ見えてきた.


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