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ESJ56 シンポジウム S08-3

陸水域の侵略的エンジニア〜成長段階ならびに生息場所に応じた生態影響

*西川潮,高村典子(国環研)


外来種の生態影響は,成長段階,ならびに生息場所の違いに応じて大きく異なることが想定される。世界的な侵入種であるシグナルザリガニ(ウチダザリガニ;Pacifastacus leniusculus)は,成長段階に伴って体サイズが大きく変化するが,これまでの消化管解析や安定同位体解析に基づく先行研究からは,成長に伴い機能的役割も変化する可能性が示されている。また,シグナルザリガニは,湖沼をはじめとして河川や湿地にも定着し,捕食やエンジニア効果,競争排除などを通じて在来生態系の生物多様性を脅かしている。しかしながら,シグナルザリガニの生息場所に応じた生態影響の違いは明らかにされていない。これらを踏まえ,本発表では,シグナルザリガニの成長段階,ならびに生息場所に応じた生態影響を紹介する。

シグナルザリガニの成長段階に伴う機能的役割の変化を明らかにすることを目的として,釧路湿原の天然湖沼で野外実験を行った。湖沼沿岸帯に20基の隔離水界(6m2)を設置し,ザリガニの体サイズ組成や有無を操作した上で,湖沼食物網構造の変化を60日間追跡した。その結果,シグナルザリガニの湖沼沿岸帯食物網における機能的役割は,成長段階に伴って明瞭な変化を遂げなかったものの,群集構成メンバーに及ぼすザリガニ1個体あたりの影響力は,ザリガニの体サイズの増加ともに3〜27倍強くなることが明らかとなった。

また,シグナルザリガニの生態影響の強さを異なる生息場所間で比較するため,過去の文献を統合しメタ解析を行った。ここでは,主に,シグナルザリガニが水生植物ならびに水生無脊椎動物に及ぼす影響(effect size)を主要な生息場所(河川と湖沼)間で比較した結果を紹介する。

シグナルザリガニは2006年に特定外来生物に指定されて以来,北海道各地で本種の駆除活動が実施されている。最後に,本発表の結果をもとに,生態系管理への提言を行う。


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