ESJ56 シンポジウム S08-4
国武陽子(城西国際大)
トマトの受粉昆虫として導入され、北海道での広範囲の定着が確実視されているセイヨウオオマルハナバチ(以下セイヨウ)により、在来のマルハナバチに対してさまざまな影響が生じていることが分かってきている。特に近縁種オオマルハナバチは、セイヨウの個体密度の増加に伴う個体密度の低下が観察されており、その要因として、花資源や巣場所といった資源をめぐる競争や、雑種交雑による女王の不稔化など複合的な要因が影響していることが示唆されている。もし、花資源をめぐってセイヨウと在来マルハナバチ間で競争が生じているとすると、この二種の相互作用には、もう1種の外来種、セイヨウミツバチの存在や密度が影響している可能性が考えられる。北海道でマルハナバチが頻繁に利用するセイヨウタンポポ、アカツメクサ、シロツメクサのパッチの多くはセイヨウミツバチも利用しており、場所によっては非常に高密度で存在する。本研究はセイヨウの定着がすすんでいる北海道において、花資源パッチにおけるセイヨウミツバチの個体密度により、そのパッチでのセイヨウおよび在来マルハナバチの個体密度とその訪花行動に違いがあるかについて調査した。その結果、セイヨウミツバチが高密度で存在するパッチでは、低密度なパッチと比較して、セイヨウ個体数に対するエゾオオマルハナバチ個体数の割合が小さくなる傾向が見られた。また、セイヨウミツバチの個体数が多いと、マルハナバチ種の個体数が減少する傾向があった。以上のことから、セイヨウによる在来マルハナバチ種への影響として、セイヨウミツバチが高密度で存在するパッチでは資源量が制限されることで競争関係がより強く生じている可能性が示唆された。