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ESJ56 企画集会 T05-2

樹冠構造に見られる木本性つる植物の多様な成長戦略

*市橋隆自,舘野正樹(東大・日光植物園)


落葉性の木本性つる植物の多くは、支持物獲得の機能を持った長いシュート(巻きつく、付着根を出す:探索枝)とその機能を持たない短い直立シュート(普通枝)を個体内で作り分ける。その形態的特徴から、伸長成長と葉の展開という役割を両シュートで分担していることが示唆されている。つる植物は樹木に比べ樹冠構造の規則性がわかりにくいが、このシュートの作り分けに着目することにより成長と受光の特性について議論が可能である。本研究ではこの点を手がかりに、同所的に現れるつる植物種間における成長戦略の多様性を評価した。大型つる植物4種のうち、サルナシ、ツルウメモドキは主に林縁で、マツブサ、イワガラミは主に林内で成長していた。林縁で成長する種は当年枝重量に占める探索枝(茎)の割合が高く、林内で成長する種は普通枝(葉)の割合が高かった。このシュート生産パターンの違いを、成長地における光環境の違い(短期的な伸長成長によって光環境が改善される見込みの大きさ)から説明を試みた。林冠に到達した後、林縁で成長していた種(特にサルナシ)はホスト樹冠の上層に葉を展開して多くの光を得ていたが、林内で成長した種はホスト樹冠の内部あるいは下部の陰になる場所に止まった。サルナシは林冠で樹冠を拡大し続け、多数の樹木の樹冠に広がっていたが、他3種は林冠到達後何十年も樹冠規模が変化しなかった。ホスト樹冠のより上部に葉を展開していた種ほどホストの成長、生存に与える影響が大きいことが示唆されたことから、林冠における樹冠動態の違いは、ホストの陰に止まって悪影響を小さくし、長い共存を目指すものと、多くのホストの樹冠に広がり続けることで共倒れのリスクを分散させるものとの戦略的な分化を表すと考えた。この他、解析中であるが、つる植物の成長に伴うシュート生産特性の変化に関する話を紹介する予定である。


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