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ESJ56 企画集会 T17-4

ササ群落拡大の要因と微気象環境への影響

藤村善安(北大・植物園)・高橋英紀(北海道水文気候研究所)


北海道北部のサロベツ湿原は、近年チマキザサ(Sasa palmata)のミズゴケ群落への侵入と分布拡大が報じられ、湿原植生保全の観点から問題となっている。またササ群落とミズゴケ群落とでは、光合成能や蒸発散量が異なると考えられ、ササ群落の拡大が、湿原の水収支や炭素収支をさらに変化させると予想されている。ササ群落拡大の主要因は、湿原周囲の農用排水路や湿地溝(自然に形成された湿原内の溝)による、排水の促進・湿原の乾燥化と考えられているが、ササ群落と高層湿原の境界部分をみると、水位は高く保たれており、乾燥化だけではササ群落の拡大は説明できない。本企画集会では、演者らが行った、ササ群落の拡大要因や拡大による微気象環境への影響に関する研究結果を紹介する。

ササ群落とミズゴケ群落の境界部分で水位計測を行い、その結果をササの拡大が顕著な地点と、ササの拡大が停滞している地点とで比較したところ、平均水位に差は見られなかったが、年間最低水位や降雨時の水位上昇幅などに差がみられた。この差は、排水のしやすさ、泥炭の有効間隙率、周囲からの水の流入の有無などに起因し、ササの拡大可否に関係していると考えられた。

ササ群落の蒸発散による水の消費は、暖候期にミズゴケ群落より約30%多いとの結果が過去に得られているが、2007年に実施した演者らの観測では、その結果を支持しない部分も見られることから、さらにデータの蓄積と解析を進めているところである。

ササ群落の高層湿原への拡大は、ミズゴケなど草丈の低い湿原植生の光合成へ大きな影響を及ぼしている。観測の結果、葉面積指数3.0のササ群落では、群落下の地表面に到達する光合成有効放射は、群落直上の値に対し、わずか3%に過ぎないことが明らかになった。


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