ESJ56 企画集会 T19-5
巌佐庸(九大・理院・生物)
生態系の保全および管理において重要なことは、生態系が人間活動の影響を強く受けるだけでなく、生態系の変遷によって人間活動も変化することである。また最近の実験社会科学の進展により、人々の行動選択は旧来の経済学理論に仮定されてきた経済利得の最大化では説明できないことが明らかになってきた。
ここでは湖水の水質管理に関する話題を例として取り上げ、生態的なダイナミックスとヒトの選択によるダイナミックスを結合させた系の理論解析を紹介したい。ヒトの行動選択の基本にある「協力」における他人への同調性をとりこむため、これが湖水のレジームシフトとも絡んで、さまざまな非線形挙動が出現する。
(1) 湖水中のリンを除去すると汚染度がむしろ高くなる可能性があること、(2) 汚染を抑えるためのさまざまな施策のうちいずれが望ましいか、(3) 人々の間での意見のコンフリクトの出現条件、などについて議論する。