ESJ56 企画集会 T27-6
*柴田淳也, 苅部甚一, 大石麻美子, 山口真奈, 合田幸子, 奥田昇 (京大・生態研セ)
動物による生息地間の移動しやすさは、その個体群の持続可能性を左右する。そのため、メタ個体群動態の理解や野生動物の保全策を検討する上で、生息地ネットワークに関する実証的な知見はとても重要である。しかし、野生動物、特に直接観察できない水中を広範囲に移動可能な魚類の生態調査は技術的に難しく、生息地ネットワークの実態には不明な点が多い。このような困難さに対し、近年急速に発展している安定同位体分析を応用することで一つの突破口が開かれると期待される。生物の安定同位体比は食物連鎖を通じ生育地固有の環境情報を反映するため、動物の出自を解明する有力な天然マーカーとなりうる。本発表では、固有魚を多数有する貴重な生態系である琵琶湖とその周囲に点在する付属湖“内湖”をモデルとして、安定同位体分析を利用した湖沼水系における魚類の移動推定手法を紹介する。さらに、魚類の生息地間移動を促進する連絡水路の物理特性を明らかにし、在来魚類の保全に資する好適な生息地ネットワークのグランドデザインを実証データに基づいて提示したい。