ESJ58 一般講演(口頭発表) D1-02
*鈴木静男(環技研),横沢正幸(農環研),犬伏和之(千葉大・園),原登志彦(北大・ 低温研),木村康倫(サイエンテック),津賀正一,多胡靖宏,中村裕二(環技研)
湿地生態系における年間の二酸化炭素交換量を閉鎖系陸圏実験施設を用いて評価した。陸圏モジュ-ルの大きさは床面積が5.8 m × 8.7 mで平均の高さは8.8 mであり、ヨシが優占する湿地生態系を野外からこの中へ導入した。この施設は、溶存態有機炭素の漏えいがなく気密性がきわめて高く気温を自動制御する。二酸化炭素濃度は、上昇時には二酸化炭素分離装置を用い空気中の二酸化炭素を一時的にタンクに分離し、減少時には分離された二酸化炭素をモジュ-ルに注入して自動的に制御される。この施設を用い、1時間当りの二酸化炭素分離量と二酸化炭素濃度の変化、一時間の平均気温と気圧から夜間の生態系呼吸速度を求めた。この生態系呼吸速度は気温と共に指数関数的に増加したため、日中の生態系呼吸速度を気温から推定した。1時間当りの純生態系生産量は、生態系呼吸速度と同様に求め、さらに二酸化炭素注入量を考慮し計算した。1時間当りの総一次生産量は、純生態系生産量と生態系呼吸量との差で定義した。これらを積算し以下を算出した。1日当りの生態系呼吸量は−0.06から−3.58 g C m−2 day−1、総一次生産量は0から6.48 g C m−2 day−1、純生態系生産量は−1.10から3.34 g C m−2 day−1の範囲で変化した。年間の純生態系生産量は、64.2 g C m−2 yr−1であった。これは、総一次生産量555.8 g C m−2 yr−1と生態系呼吸量-491.6 g C m−2 yr−1の収支である。以上のことから、湿地生態系は、1年間で炭素の吸収源として振舞っており、これらの結果は、渦相関法を用いた他の研究結果と比較して妥当な値を示した。本研究は、青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。