ESJ58 一般講演(口頭発表) F1-08
*宮崎佑介, 照井 慧, 鷲谷いづみ(東大院・農)
通し回遊魚の移動を妨げる河川横断構造物による分断化や、止水性魚類の生息場所を喪失させる氾濫原湿地の開発は、水質汚染や外来生物の影響とともに淡水・汽水魚類の生息を脅かす主要な要因となっている。
本研究では、本川には河川横断構造物がない一方で、氾濫原湿地の大半が既に失われている北海道南西部の朱太川水系に生息する魚類の分布、および局所環境要因と河川に沿った海からの距離が種の個体数に及ぼす影響を検討した。
朱太川水系の本川16地点(48トランセクト:20m×2m)、4支川12地点(36トランセクト:20m×2m)を調査地点として設定し、2010年の夏季および秋季に定量調査(魚類の種ごとの個体数、DO、流速、底質、水深、被覆率)を行った。各地点までの河川に沿った海から距離は地形図から算出した。記録された種を、既往の知見から河川と氾濫原の依存度の指標となる流水性・準流水性・止水性の3タイプに分けて、季節別に魚類群集組成の比較を行った。また、10トランセクト以上で記録された魚種について、個体数と諸要因との関係を、地点をランダム効果としたGLMMによって解析した。
調査の結果、夏季・秋季ともに、流水性、準流水性、止水性の降順に個体数が多かった。また、秋季には夏季よりも流水性魚類の割合が増加、準流水性魚類の割合は減少した。
GLMMの結果、秋季には溯上中のシマウキゴリ稚魚を除き流水性の種には概ね流速の正の効果、準流水性の種には負の効果が認められた。さらに、秋季には絶滅危惧種のカジカ中卵型は大礫の、カワヤツメ属未同定種(アンモシ-テス幼生)には砂の有意な正の効果が認められた。また、夏季と秋季の双方について解析した種において、秋季の方でのみ被覆率や底質の影響を受けている種があり、成長段階によって微妙にハビタットを変化する可能性が示唆された。