ESJ58 一般講演(口頭発表) F2-08
*仲澤剛史(京大・生態研センタ-), 土居秀幸(Univ. Oldenburg)
ここ数十年の気候変動によって、生物の季節的な振る舞い(繁殖や渡り、開花、開葉など)が大きく変容してきていることが報告されている(フェノロジ-シフト)。重要なことに、その影響の程度や方向性は種ごとに違うため、気候変動は種間相互作用の同調性や個体群ダイナミクスの季節性を変え、さらには群集構造や生態系機能にも予期せぬ影響を引き起こすかもしれない。本研究では、まず始めに、フェノロジ-シフトの観測デ-タは、できれば個体数ではなく人口学的な形質パラメ-タ-も含んでいることが望ましいと主張する。なぜならば、そうでなければ、気候変動に対する群集レベルの応答メカニズムを厳密に理解したり、プロセスベ-スの数理モデルを構築したり、群集内外への波及効果を予測することが困難になるからである。くわえて、種特異的なフェノロジ-シフトの群集生態学的な影響を調べるための第一歩として、人口学的パラメ-タ-の季節性を組み込んだ三種系の栄養モジュ-ルモデルを提示し、フェノロジ-の同調性と群集構造の関係について考える。その結果、フェノロジ-の同調性は群集ダイナミクスの基本的な特性(トロフィックカスケ-ドの強さや種間競争関係、共存可能性など)に大きく影響することが示された。形質のフェノロジ-と種間相互作用のトポロジ-に着目することで、生物多様性の気候変動科学において、生態学者はもっと活躍できると期待する。