ESJ58 一般講演(口頭発表) G1-02
*加藤 真1・杉浦 里奈1・内山幸紀2・鈴木敏章2・古賀桃子2・日紫喜文2・加藤 春喜3・橋本啓史2・新妻 靖章2(名城大院・農1・名城大・農2,トヨタ白川郷自然学校3)
近年ツキノワグマ(以下クマ)の人里への出没などで人との軋轢が生じている.軋轢を減少させるためにはクマの生態を理解する必要がある.食性はクマの行動に大きく影響することが知られ,クマの保護・管理に必要な調査事項である.クマの食性は各地で調べられているが地域差や年次変化があり,食性解明には各生息地での長期的な調査が必要である.
本調査では岐阜県白川村で2008-2010年4月-11月の期間クマの糞を採取し,08年,09年,10年度それぞれ189,442,244個の糞を分析をした.糞の各内容物の割合,出現頻度から重要度指数から食性を示した.また,クマの採餌する食物の栄養分析もおこなった.春の食性:前年度のドングリ類が豊作だった08年度と10年度は前年度に残存したミズナラ,コナラを多く利用した.一方前年度のドングリ類が並作だった09年度はザゼンソウ に大きく依存した.初夏:08,10年度は前年度に主に残存したミズナラ,コナラ堅果やササ属を利用し,09年度はササ属やシシウドの草本類を利用した.また,少量だがアリも利用されていた.晩夏:08年度はウワミズザクラ,09年度はミズキ,10年度はクリの果実に大きく依存し,はっきりした年次変化がみられた.秋期:コナラやミズナラなどが不作だった10年度はクリの堅果,次いでコナラやミズナラ,民家近くのカキノキの果実を利用した.ドングリ類が並作だった08年度はコナラやミズナラ,次いでウワミズザクラやヤマナシを利用し,ドングリ類豊作だった09年度ドングリ類に大きく依存した.
本調査において堅果の豊凶がクマの食性に影響を与えていた.栄養価についてアリは植物質に比べ栄養価が高く,重要度が過小評価になっていた.