ESJ58 一般講演(口頭発表) G1-03
白木彩子*(東農大・生物産業)・杉本太郎(北大院・環境科学院)・斎藤慶輔(猛禽医学研)・大沼 学(国環研)
オジロワシHaliaeetus albicillaは北半球に広く局所的に分布する。北海道は極東地域の繁殖地南限に当たり、2009年度の調査では約150つがいの繁殖が確認されている。本種の保全において遺伝子レベルでの検討も必要であることから、本研究は北海道における繁殖集団の遺伝的多様性および集団の遺伝構造について明らかにすることを目的として行った。
北海道の営巣地で捕獲したオジロワシの巣内ヒナの皮膚組織や営巣つがいの羽、回収された死体の筋肉や血液からDNAを抽出し、Hailer et al. (2007)で報告されているプライマ-を用いてミトコンドリアDNAコントロ-ル領域504bp断片の塩基配列を決定した。
これまでに塩基配列が決定できたサンプルのうち、越冬個体の可能性を否定できないものや同一個体の可能性のあるものを除いたサンプルを北海道繁殖集団(N =76)とした。北海道繁殖集団においては10種類のハプロタイプを確認した。これらのハプロタイプのうち3タイプは、先行研究 (Hailer et al. 2007)により北海道とロシアのアム-ル地域で確認されていた。また、これらの3タイプのうちの1つは北海道各地で出現し、全体の80%を占めた。残りの8タイプは本研究で初めて確認されたが、いずれも出現頻度は非常に低かった。
北海道繁殖集団のハプロタイプ多様度は0.4280(±0.0706)、塩基多様度は0.002019(±0.001522)と算出され、両者とも比較的低かった。また、北海道繁殖集団を東部地域、北部地域に分けて両者の遺伝構造を比較したところ、両集団は遺伝的に分化している可能性が示唆された(Fst= 0.3248, P<0.00001)。