ESJ58 一般講演(口頭発表) G2-08
*福井眞(京大生態研センタ-), 山内淳(京大生態研センタ-)
植食者は植物の成長にとって大きなインパクトをもたらす。摂食により基本的には植物のバイオマスを減らす一方で、補償成長や栄養塩のリサイクルを通して生産性を押し上げる効果がある。一年生植物では、植食者の存在により繁殖成功度も押し上げられうることがYamauchi&Yamamura(2004)で理論的に示されている。
植物は、同種個体が群生している場合、土壌栄養塩の吸収を巡っての競争が起きていることが考えられる。より早く成長して大きく根を張ることは、より多くの栄養塩の吸収を促進し、競争の上で有利になりうる。しかし、早く成長してバイオマスを大きくすると、植食者によって摂食を受ける頻度が必然的に高くなる。栄養塩のリサイクルが行われると、リサイクルされる栄養塩は自身ですべて再度吸収できるとは限らず、他個体へと流出する。他方、摂食に対して防衛物質を生産することにより、摂食されることのダメ-ジを軽減できる。防衛物質の生産はどのようなタイミングで行うのが最適であろうか?本研究では一年生植物を仮定し、栄養塩吸収を巡っての競争が防衛物質生産と成長のスケジュ-ルに与える影響を調べた。