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ESJ58 一般講演(口頭発表) H2-05

標高30-3000mに生えるミヤマハタザオの局所適応:相互移植実験による検証

*田中健太(1筑波大・菅平セ), 山口正樹(2京大・生態研), 恩田義彦(1), 小林元(信大・AFC), 杉坂次郎(2), 河野真澄(2), 工藤洋(2)


モデル植物シロイヌナズナと同属のミヤマハタザオ(Arabidopsis kamchatica ssp. kamchatica)は、同一緯度帯において30m-3000mという非常に幅広い標高帯に分布する多年草である。ごく近縁なタチスズシロソウ(A. kamchatica ssp. kawasakiana)は、標高100m未満だけに分布し、しかも一年草である。これほど異なる標高に対する適応機構や、亜種間で顕著な差異をもたらした進化的背景は興味深い。本研究では、様々な標高に生育するこれらの植物が、異なる標高に対して進化的に適応しているのかを検証するため、相互移植実験を行った。

標高160・1300・2700mの三圃場それぞれに、2亜種・18集団由来の計2024・2065・1704本の実験室第二世代実生を、2009年9・11・12月に移植した。適応度の指標として生存・成長・繁殖を一年間追跡した。高標高圃場では、雪解け直後の初回調査時までに霜柱害によって全個体が死亡していたが、葉柄が残存している個体を比較的長く生存した個体と仮定した。

暫定的な解析結果では、いずれの圃場においても本来生育していた標高帯によって生存率が異なり、生育標高によって異なる標高適応の性質を進化させていることが示された。全体的には、生育標高帯と同じ標高帯の圃場で生存率が高いというホ-ムサイトアドバンテ-ジの傾向が見られたが、中標高圃場でミヤマハタザオ高標高由来の生存率が高いなど、ホ-ムサイトアドバンテ-ジの図式から逸脱した結果も散見された。

標高に対する進化的適応の存在は示されたものの、予想される単純な様式ではないことから、標高以外に局所適応に対して重要な要因があるのかもしれない。


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