ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-075
*田中 格,長池卓男(山梨県森林総研)
これまで,落葉広葉樹における被陰応答性について実験により明らかにしてきた。ここで,実験により明らかになった被陰応答性と自然条件での被陰応答性の差異について明らかにすることは重要であると考え,強度間伐後に天然更新した落葉広葉樹の光応答性について検討した。強度間伐を実行したカラマツ人工林(相対光環境29.4%)に天然更新したコナラ,ミズナラ,シラカンバの落葉広葉樹3種の稚樹について,成長として樹高成長,光合成特性としてSPAD値(クロロフィル量の指標)とFv/Fm(光化学系?の健全度の指標)を測定した。対照として隣接する未間伐林(相対光環境16.4%)に更新した稚樹でも同様の測定を行い比較した。その結果,シラカンバは未間伐林には更新が認められず,相対光環境20%下での更新は困難であり,更新における光要求度が高いことが確認された。コナラとミズナラは,更新本数は母樹本数が多いコナラがミズナラよりも多かったが,樹高においては,コナラ,ミズナラのいずれも間伐林が未間伐林より統計的に有意に高くなり,樹種間では,間伐林,未間伐林のいずれでも統計的な有意差が認められなかったことから,両種は相似した樹高成長を示すと考えられた。また,間伐林,未間伐林いずれにも更新していたコナラとミズナラの光合成特性を検討したところ,SPAD値については,100cm付近まではほぼ一定であるが100cm付近より小になると低下が始まる傾向を示したことから,コナラ,ミズナラのSPAD値は稚樹の樹高(サイズ)の影響を受け,樹高100cm付近に閾値を持つ可能性が示唆された。また,Fv/Fmについては,樹高に関係なく0.8付近の正常値を示したことから,光化学系の健全度については,コナラ,ミズナラともに稚樹サイズの影響を受けない可能性が示唆された。