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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-082

しおれからの回復による小笠原移入樹種の光合成特性変化

*矢崎健一(森林総研),石田厚(京大・生態研)


■小笠原父島では、高木の移入種であるアカギ(Bischofia javanica)の拡大阻止が急務である。小笠原は乾燥性ながらときに台風が襲来するため、林地の水分環境が大きく変動する。アカギは土壌の厚い立地に侵入するが、水分環境変動への適応特性は不明である。そこで本研究では乾燥と潅水に対して、アカギと在来種の生理・形態的反応を比較し、アカギの侵入メカニズムを水利用特性の点から明らかにすることを目的とした。

■アカギおよび在来種のヒメツバキ(Schima mertensiana)、テリハハマボウ(Hibiscus glaber)およびシマイスノキ(Distylium lepidotum)の当年生ポッド苗を供試木とした。森林総研の自然光ファイトトロン内で、13-15日間の乾燥処理・2日間の回復処理を3サイクル行い,葉の枚数、ガス交換速度および水ポテンシャルを継時的に測定した。

■在来種では、乾燥-潅水サイクルの進行により徐々に落葉した。一方、アカギは最初のサイクルで一気に葉を落としたが、潅水によって新たに展葉した。潅水直後のガス交換特性については、在来種では飽差(VPD)に対する気孔反応が鈍く、サイクルが進むにつれて最大光合成速度は低下傾向にあったが、アカギは気孔反応、最大光合成とも、徐々に処理前の値に回復する傾向にあった。日中の水ポテンシャルについては、在来種は乾燥によって低下したのに対し、アカギは乾燥しても高いままであった。このことからアカギは在来種よりも土壌水分を吸収する力が弱いといえる。

■以上の結果より、水を吸い上げるのに強い力が必要な立地(乾燥尾根部など)ではアカギは十分生育できない一方,変動する水資源を在来種よりも効率良く利用して成長することで,土壌の厚い立地に侵入することが示された。


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