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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-083

根の水吸収と蒸散?光合成関係から考える葉と根の物質分配

*杉浦大輔,舘野正樹 (東大・院・理)


本研究は、植物体の根の量がNの需要と水の需要どちらに合わせて作られているかを、理論と実測から明らかにすることを目的とする。

Nに注目したこれまでの研究から、植物体の葉と根の比・葉のN濃度は、光環境で決まるNの需要および土壌からのN利用可能性の2つに応じて、成長速度を最大化するように調節されていることを明らかにしてきた。ここでは、強光環境下ほどNの需要が大きいため、強光ほど根の量が大きくなることが示唆された。

一方で、根は水の吸収機能も持ち、吸収された水の大半は葉におけるCO2取り込みに伴う蒸散で消費されるため、水は光合成の維持のためにも非常に重要である。ここで、強光環境下では光合成速度が高いために蒸散速度(水の需要)も大きく、弱光環境下では光合成速度が低いために蒸散速度(水の需要)も小さい。そのため、強光環境下で根の量が大きくなるのは、水の需要に合わせた結果という可能性も考えられる。

発表者は、根の量がNと水の需要のどちらに合わせているか、という問いに対して、根の量を現状より少なくしたとき、蒸散・光合成速度とN吸収量のうち、より大きく減少した方に合わせて作られていると考えた。そこで、根の量がNと水の需要のどちらに合わせているかを明らかにするため、植物体中の水の通導度と蒸散?光合成関係を考慮したモデルから、根の量の減少が蒸散・光合成速度およびN吸収速度に与える影響を予測した。次いで、カジカエデ稚樹およびイタドリを用いて、実際に根の量を減らしたときの蒸散・光合成速度およびN吸収速度を測定し、モデルの予測を検証した。

モデル予測と検証実験からは、根の量を減らしたときの光合成の減少は、強光下の植物では小さく、弱光下の植物では大きいことが示された。これらの結果から、特に強光環境下において、根の量は蒸散・光合成速度のためには過剰に作られていることが示唆された。


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