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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-090

冬緑性草本ヒガンバナの,初期成長と葉の生理特性に対する施肥時期の効果

*西谷里美(日本医大・生物),中村敏枝(首都大・生命科学),可知直毅(首都大・生命科学)


冬緑性草本であるヒガンバナは,葉のない季節 (非展葉期:関東地方では6月から9月)にも新根を出し,窒素を吸収することが明らかになっている。そこで,非展葉期の窒素吸収が展葉期のパフォ-マンスに与える影響について検討することを目的として栽培実験を行った。今大会では,展葉期の初期段階を中心に報告する。

鱗茎の直径を指標としてサイズをそろえたヒガンバナを,施肥時期の異なる4条件および無施肥の合計5条件下で栽培した。各条件での施肥の開始時期は次のとおりで,いずれも施肥期間は7週間である;条件1:4月中旬(落葉期),条件2:6月上旬(非展葉期),条件3:8月中旬(非展葉期),条件4:10月上旬(展葉期),条件5:無施肥。植物を植えたポットは,雨天時以外は屋外(川崎市)に置き,必要に応じて潅水した。9月上旬から1週間おきに展葉数と最も長い葉の葉長を測定した。葉の急速な伸長が終了した11月下旬に,光合成速度(光強度1200μmol/m2・s,大気CO2濃度370ppmと1200ppm)と,葉が細胞外凍結を起こす温度を測定した。また12月上旬に堀上げ,乾燥重量を測定した。

秋の展葉は,非展葉期に施肥を行わなかった条件下(条件4,5)で遅れる傾向が見られ,展葉数も少なかった。また,12月上旬における個体の乾燥重量もこれらの条件下で有意に小さく,非展葉期の窒素吸収が初期成長に影響を与えることが示唆された。370ppmにおける光合成速度は展葉期に施肥を行った条件4で最も高かったが,無施肥の場合と有意差はなかった。一方,1200ppmでの光合成速度は条件4で有意に高かった。細胞外凍結が起こる温度は-5--6℃程度で,条件間で有意差は見られなかった。


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