ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-092
*岩永史子, 今田省吾, 谷口武士 (鳥取大乾燥地研), Kumud Acharya (DRI), 河村幸雄 (近畿大・農), 森信寛, 田中浄, 山本福壽 (鳥取大・農), 山中典和 (鳥取大乾燥地研)
アメリカ西部に位置するモハベ砂漠において、砂漠地帯を貫流するコロラド川の河畔で、かつて導入された中国原産の塩生植物・タマリスク(Tamarisk spp.)が広域な単一群落を形成している。外来種のなかには在来種と比較して旺盛な水消費を示す事がある。モハベ砂漠においても同様に、急激な植生変化に伴う水資源への懸念や、表層土壌における塩濃度の変化、および動物相への影響など、重要な環境問題のひとつとして関心を集めている。タマリスク種の急激な生育地拡大には、本種の高い繁殖能力と、耐塩・耐乾性によるところが大きい。本研究ではタマリスクの環境ストレス適応を解明することを目的とし、特に適合溶質蓄積能について解析を行った。実験材料はアメリカ合衆国ネバダ・カリフォルニア・アリゾナ州のコロラド川流域の5地点で、2009年10月17日-27日に葉の採取を行った。植物の生葉を採取、ただちに純水で2分間洗浄、一部を煮沸し持ち帰った。煮沸サンプルは80%エタノ-ル中で破砕・抽出後、還元糖およびアミノ酸の分析を行った。生葉サンプルの一部を80℃・48時間乾燥させた後、ベタインおよび陽イオンの分析を行った。その結果、生育環境に起因するさまざまなストレス条件下で重要な浸透圧低下に寄与すると考えられている、ベタイン類、糖、およびアミノ酸のうち、特にアミノ酸の蓄積量と葉内Na濃度と高い相関が得られた。ベタイン類では含有量では葉内塩濃度の増加に従って低下の傾向が認められ、糖含有量も変化しない、あるいは現象の傾向を示した。これらの結果から、タマリスク種の耐塩性獲得において、特にアミノ酸の蓄積が重要であることが示唆された。