ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-099
*中路達郎(北大・北方生物圏FSC), 野口享太郎(森林総研), 伊ヶ崎知弘(森林総研), 小熊宏之(国環研)
森林の土壌中の炭素の多くは、植物根と植物遺体由来の有機物および腐植の形態で存在し、これらの相互関係や時空間変化といった基本動態の解明は、森林生態系の炭素収支に対する理解を深めるとともに、今後の温暖化の影響を予測する際に非常に重要な意味を持つ。植物根やリタ-中の炭素のなかで高い割合を占めるリグニンとセルロ-スは波長1.7μmから2.2μmの間に吸収帯をもっている。本研究では、樹木の根圏における有機物組成の非破壊・画像計測手法を開発するための基礎試験を行った。
ガラス製のポットにハイブリッドポプラを育成し、短波長赤外波長(1.0?2.4μm)におけるハイパ-スペクトル画像を撮影できるカメラ(Specim N24E)を用いて、発生後1-20週の生きている根と枯死根、土壌中のリタ-を定期的に撮影した。撮影後の対象物中の有機物組成(リグニン、セルロ-ス、可溶性炭水化物)を計測し、非破壊で得られた分光スペクトルによる組成の推定を試みた。ケモメトリクスによるPLSモデルを作ることで、18-28%の推定誤差(平均に対するRMSE相対値)でそれぞれの成分量が再現できることに成功した。モデルアプロ-チを画像情報に展開することで、根圏有機物の非破壊推定と時空間変化の可視化が期待される。