ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-108
梅木清(千葉大園芸)
温帯域の落葉広葉樹の開葉フェノロジ-には様々なパタ-ンがある。典型的な例としては、シュ-ト(成長点から一成長期間に伸長した茎+葉)内の葉が成長期間はじめに一斉に開葉する一斉開葉型と比較的長い期間にわたって葉が一枚ずつ開葉する順次開葉型がある。
本研究では、機能的・構造的樹木モデルを使用して、開葉フェノロジ-の物質生産上の意義を検討した。一斉開葉・順次開葉の物質生産上の特徴は、1) 一斉開葉では順次開葉より葉寿命を長くすることが可能である、2) 一斉開葉では、開葉時から落葉時までシュ-ト下部の葉がシュ-ト上部の葉から強い被陰を受け続けるが、順次開葉では、シュ-ト下部の葉も光合成能力が高い開葉直後には被陰を受けない、と整理できる。
陰葉型の光?光合成曲線を持つ樹木モデルでのこれまでの検討では、一斉開葉は常に順次開葉より多くの年間光合成量をもたらした。今回は、陽葉型の光?光合成曲線を使用したり、シュ-ト内の葉数を増加させたりして、順次開葉が一斉開葉より年間光合成量において有利になる条件を探索した。
一斉開葉・順次開葉間でシュ-ト内の最初の開葉と最後の落葉のタイミングをそれぞれそろえた条件では、順次開葉は、個葉の単位時間当たりの光合成速度を増加させるものの、短い葉寿命を補うほどの効果はなく、順次開葉による年間光合成量は一斉開葉によるものより小さかった。しかし、個葉の葉寿命を固定した比較では、順次開葉は一斉開葉より大きな年間光合成量を実現した。何らかの原因で、個葉の寿命が生育期間より短く限定される状況があるとき、開葉時期をずらし順次に葉を開葉することは物質生産の観点から見て有利であることが明らかになった。