ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-109
*山口大輔(信大農), 宮崎政幸(綜合地質コンサルタント), 小林元(信大AFC)
同一斜面の異なる位置に植栽されたヒノキ成木において,3次枝シュ-トの伸長量と光合成速度を測定し,ヒノキシュ-トの光合成におよぼす土壌養水分と気温,およびシュ-ト伸長フェノロジ-の影響を検討した。調査は,信州大学農学部附属手良沢山演習林ステ-ションで行なった。平均傾斜35°の東北東向き斜面に植栽された25年生のヒノキ林を対象とし,斜面上部と下部に調査プロットを設定した。平均樹高は斜面上部と下部プロット,それぞれ9.3mと11.7mで,下部プロットが上部プロットより有意に大きかった。2010年の4月中旬から12月中旬にかけて3次枝シュ-トの伸長量と光合成速度の測定を行なった。光合成速度は携帯型光合成蒸散測定装置(LI-6400,ライカ-社)を用いて,着葉状態で2日から17日の間隔で計27回測定した。3次枝シュ-トは4月から8月下旬まで伸長を続けた。斜面下部個体のシュ-トは,上部個体の約2倍大きく伸長した。シュ-トの光合成速度もまた,4月から9月中旬まで増加した。光合成速度は斜面下部の個体が1年を通して上部個体より高かった。一方,斜面下部の個体では夏期の土壌乾燥期に気孔コンダクタンスと光合成速度が低下した。しかし,斜面上部の個体では低下しなかった。9月中旬以降に土壌の水ポテンシャルが回復すると,光合成速度は上下の両プロットで年間を通して最大の値を示した。しかし,10月中旬から気温の低下とともに光合成速度は徐々に低下し,12月に入ると大きく低下した。
成長期に鱗片葉が葉端で次々と展開し続けるヒノキにおいて,光合成速度の季節変化はシュ-トの伸長フェノロジ-を反映していること,また,光合成速度の高い斜面下部の個体では,光合成速度の低い斜面上部の個体より土壌乾燥の影響を強く受けることが明らかとなった。