ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-110
*高梨聡(森林総研・気象),小杉緑子(京都大・濃)
気孔開度を示す気孔コンダクタンスはポロメ-タによるガス交換量の測定から推定されてきたが、この方法では一つの代表された気孔からガス交換が行われると仮定されている。ところが一枚の葉には気孔が多数存在しており、マレ-シア熱帯雨林のフタバガキ科の樹種では、光合成の日中低下と同時に不均一な気孔の閉鎖が生じることが確認されている。不均一な気孔開閉が起こる場合には、葉スケ-ルでのガス交換特性は気孔開閉を均一と仮定した場合とは異なる挙動を示す。本研究は、既存のモデルを用いて気孔開閉特性と光合成特性と環境要因との関係をそれぞれモデル化し、それらを組み合わせることによって、気孔開閉が不均一なことによって起こるH2O/CO2/13CO2交換特性に与える影響を定量的に考察する。
マレ-シア・パソ森林保護区(PSO, 2°58’N, 102°18’E, 標高75-150m, 平均年降水量1804mm:1983-1997)において、樹冠構成樹種であるフタバガキ科Dipterocarpus sublamellatus(樹高40m, 測定高約32m)を用いて測定を行った。ガス交換測定で得られた光合成・蒸散量および環境条件のデ-タからJarvis型気孔コンダクタンスモデルおよびFarquhar型光合成モデルのパラメ-タを抽出し、モデル計算を行った。気孔開閉の不均一性を考慮した気孔コンダクタンスモデルを利用し、その影響を定量的に評価した。その結果、不均一な気孔開閉が起こっている場合には、ガス交換測定結果から均一性を仮定して算定される葉内二酸化炭素濃度(Ci)は大きいときで約50ppm近く、また二酸化炭素安定同位体分別を用いて推定されるCiは約15ppm 程度過大評価されることが示された。