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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-122

緯度系列で比較するモウソウチクの葉の形態的可塑性

*福島慶太郎(京大フィ-ルド研), 臼井伸章(京大院・農)


日本の里山に分布するモウソウチクは,ほとんどが株分けによって導入されたクロ-ナル植物である。また,開花結実の周期が長く繁殖成功率も極めて低いため,全国でほぼ同一のクロ-ンである可能性が指摘されている。日本は南北に長く気象の変化に富むため,全国に分布するモウソウチクにも様々な気象環境に順応するための形態的な可塑性が存在するはずである。一方で世代交代が進んでおらず,遺伝的特性が同一であることから可塑性が見られない可能性もある。本研究では,環境傾度に沿ったモウソウチクの形態的可塑性を明らかにすることを目的に,秋田から鹿児島まで計19地点でモウソウチク林の稈密度や胸高直径(DBH),群落高を調査し,各林分で日の当たる葉を採取して葉厚,葉重,比葉面積(SLA)を測定した。

稈密度,DBH,年平均気温から,平均気温の高い場所では稈密度が低く,稈の直径の太いモウソウチク林分が形成されることが示された。平均群落高は,サイトの年間日照時間と正の相関が認められ,晴天の多い地域ではモウソウチクの稈高が高くなることが示された。このように,モウソウチクの林分構造は気温や日照時間といった気象条件に対応した可塑性を有していることが示唆された。また,平均葉厚は年平均降水量と負の相関が認められ,SLAと胸高断面積合計(BA)との間に正の相関が認められた。この関係から,地上部現存量が多い林分ほど,薄くて広い葉をつける傾向にあるといえる。このことは,一定の投資量に対して光合成能力の高い葉がついている林分で,地上部現存量が多いことを意味する。以上のことから,モウソウチクの葉の形態は,林分の気象条件や立地条件と密接に関連するとともに,林分の地上部現存量にも関連することが分かった。モウソウチクは,各地の環境条件に順応した形態的可塑性を有しており,モウソウチク林の物質生産を検討する際には地域性を考慮する必要があるといえる。


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