ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-127
*彦坂幸毅(東北大・院・生命科学),衣笠利彦(鳥取大・農),及川真平(東京農大・国際食料情報),小野田雄介(九州大・院・理),廣瀬忠樹(東京農大・国際食料情報)
種子生産の高CO2応答は種間で大きくばらつくことが知られている。我々は窒素利用の違いが種子生産の高CO2応答の違いをもたらすとの仮説をもち、単純なモデルをもとに解析を行った:種子生産の増加は、種子窒素濃度の低下もしくは個体あたり種子窒素量の増加の積として表される。C3一年草についての既発表デ-タをもとにメタ解析を行った。用いたデ-タをイネ科、窒素固定を行うマメ科、マメ科以外の双子葉植物の3つのグル-プにわけ、それぞれのグル-プにおける種子生産の増加がどのような要因によるものかを調べた。その結果、いずれのグル-プでもCO2上昇により種子生産が増加したが、その原因は異なることが明らかとなった。マメ科では種子窒素濃度に変化がなく、種子生産の増加は個体あたり種子窒素量の増加に帰せられた。マメ科以外の植物でも、種子窒素濃度に若干の低下が見られたが、種子生産増加の主要因は個体あたり種子窒素量の増加であった。一方イネ科では種子窒素濃度の大幅な低下が見られ、種子窒素濃度の低下と個体種子窒素量の増加の寄与は同等であった。このようなCO2応答の機能型間の違いは、高CO2環境での適応度に影響を及ぼし、将来の種組成に影響を及ぼすかもしれない。