ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-129
*青田崇志,金子悠哉,佐久川結喜,相原浩行,志賀陵典,堀良通(茨城大・理)
日本の林床植生において、ササは重要な植生要素となっており、多様性に大きく影響を与えるとともに、物質生産にも大きく寄与している。
阿武隈高地の南端に位置する小川群落保護林において、アズマザサ、ミヤコザサ、スズタケの3種について、定期的に携帯型光合成測定装置(Li-6400)を用いて、それぞれの当年葉の光-光合成速度関係の測定を行った。林冠は主に、ミズナラ、ブナ、アカシデが優占しており、林床には局所的に3種のササが優占している。アズマザサとミヤコザサは伐採跡地と林床、スズタケは林床を調査区として設けた。調査区の地上部バイオマスは、スズタケの林床が690g・m-2と最も大きく、アズマザサは伐採跡地、林床でそれぞれ382、32g・m-2であり、ミヤコザサは91、23 g・m-2であった(2009年9月)。また、開空率は伐採跡地では約45%、林床では約12%(2010年8月)であり、落葉後の林床は50%-60%まで上昇した(2010年12月)。
最大光合成速度(PPFD:2000μmol・m-2・s-1、CO2濃度:380μmol・mol-1)は、伐採跡地においてはアズマザサ(13.8μmolCO2・m-2・s-1)がミヤコザサ(10.7μmolCO2・m-2・s-1)より大きな値を示し(2009年8月)、林床においてはスズタケ(7.2μmolCO2・m-2・s-1、2009年8月)がアズマザサ、ミヤコザサ(それぞれ6.5、7.0μmolCO2・m-2・s-1、2009年9月)より大きな値を示した。また季節的な変化では、伐採跡地においては両種とも夏季(2009年8月、2010年7月)に、林床においては開空率が大きくなる冬季(2010年12月)に最大光合成速度を示した。