ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-214
*長谷川尚志(京大・生態研),力石嘉人,小川奈々子,大河内直彦(JAMSTEC),陀安一郎(京大・生態研)
生元素の安定同位体比を用いた研究は、食物網解析手法としての有用性のため、大きく広がってきている。さらに近年、同位体比に影響する代謝機構がより明確である、特定の分子の同位体比を用いた研究がなされ始めている。その中でも、アミノ酸の窒素安定同位体比は、従来の同位体手法より正確な栄養段階が算出されるという有用な知見が蓄積しつつある。一方、それら知見の多くが水域の生食食物網を対象として得られているために、陸域の食物網、その中でも重要な割合を占める腐食食物網への適用可能性については検討されていない。土壌中の腐食食者には生食食物網上の動物とは異なる窒素同位体比のパタ-ンが見られるという事実から考えると、アミノ酸の窒素安定同位体比についても土壌食物網で特殊なパタ-ンがあると予想される。
そこで、本研究では多種多様な腐食食者を含む中型土壌動物群集を対象に、アミノ酸窒素安定同位体比を分析した。従来の同位体手法による分析やその他の先行研究による食性情報と比較することで、土壌食物網におけるアミノ酸窒素安定同位体比のパタ-ンを解析した。あわせて採集・保存に関わる作業による影響の有無や、飼育実験などを行うことにより、中型土壌動物のアミノ酸窒素同位体比を分析する上での基礎的な情報が得られた。