ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-238
宮下太輔*,東 信行 弘前大学大学院農学生命科学研究科
Oryzias属の中で温帯に分布するのは、メダカOryzias latipesのみであり、その他は熱帯と亜熱帯に分布し、本種Oryzias latipesが熱帯起源であることを示している。またメダカは日本において青森県を自然分布の北限として本州以南琉球列島まで分布し、遺伝的に異なる北日本集団と南日本集団に分けられることが知られている。熱帯起源であるメダカが北上していく中で越冬による選択圧にさらされたのは、明らかである。メダカの越冬はサイズ依存的であり、冬までにいかに速く成長するかが重要である。成長速度に関する室内実験では、高緯度の個体群の方が速い傾向にあり、耳石を用いた野外実験においても、高緯度個体群の方が高い成長速度のポテンシャルを示した。
そこで本研究では、成長とエネルギ-消費に関する分配的トレ-ドオフの可能性に着目し、緯度の異なる個体群間でエネルギ-消費に関る活動性を比較した。標本には北日本集団5地点、南日本集団7地点、弘前大学実験室での飼育下次世代個体を用いた。活動性の指標として、個体のル-ティンでの遊泳速度を計測した。個体の酸素呼吸量についても計測を行い、比較した。さらに活動性の潜在能力の指標となるETSA(Electron Transport System Activity;電子伝達系活性)と遊泳速度の関係についても考察した。その結果、南北集団に関らず高緯度個体群ほど遊泳速度が遅いという緯度クラインが得られた。越冬の必要な高緯度個体群は、活動性が低くし、これにより速い成長速度を獲得して厳しいに適応したと考えられる。