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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-244

ソラマメヒゲナガアブラムシの翅型分化過程における翅原基の発達/退縮の制御

*阿部 太亮, 石川 麻乃, 三浦 徹 北大, 理, 生物科学


同一の遺伝子型から、環境に応じて複数の不連続な表現型が作り出される現象を表現型多型という。この現象は古くから知られているが、分子発生的なメカニズムには未解明な点が多い。アブラムシは、複雑な生活史の中で季節や密度に応じて一つの遺伝子型からさまざまな表現型を作り出すことが知られる。中でも、胎生単為生殖世代に見られる密度に応じた翅多型は、容易に翅型の誘導が可能であるため、研究対象として優れている。

アブラムシの祖先は翅多型を示さず、全て有翅であったと考えられている。また、アブラムシの無翅胎生雌では発生過程の初期に翅原基が形成され、後に退縮することが知られる。以上のことから、アブラムシは有翅・無翅どちらの翅型でも翅の形成能力を潜在的に持つが、無翅型では翅形成過程が停止することが予想される。そこで本研究では、ソラマメヒゲナガアブラムシMegoura crassicaudaの無翅型の後胚発生における翅原基の退縮過程を明らかとすることを目的として、下記のような組織学的な観察を行った。

組織切片を用いて有翅・無翅の翅原基を比較すると、1齢幼虫期では発達の程度に大きな差は見られなかったが、2齢以降では有翅型の原基は肥厚しているのに対し、無翅型の原基は退縮していた。そこで、翅原基の退縮が起こる時期をより詳細に知るために、1-2齢間の翅原基の発達・退縮過程をさらに細かいタイムスケ-ルで観察した。その結果、無翅型の翅原基は1齢中期には発達が抑制され、1齢の後期から2齢の初期の間に退縮することが明らかになった。

また、翅多型を示す他種の昆虫では、無翅型の翅原基はアポト-シスにより退縮することが知られる。そこで、アブラムシの無翅型での翅原基退縮の分子発生メカニズムを探るため、無翅型の翅原基においてアポト-シスの実行因子であるactive Caspase 3の有無を免疫染色により解析した結果も併せて報告する。


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