ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-245
*渡辺なつ樹,梶光一(農工大・農),小林万里(東農大・生物産業,NPO 北の海の動物センタ-)
北海道に来遊するゴマフアザラシの食性
○渡辺なつ樹1・梶光一1・小林万里2
(東京農工大学大学院・農1・東京農業大学・生物産業2)
北海道沿岸には冬期にゴマフアザラシ(<iPhoca largha>)が来遊し、流氷上で繁殖を行うことが知られるが、近年、本種の分布には大きな変化がみられる。北海道への来遊数の増加に加え、従来は来遊のなかった日本海側における分布の南下・拡大と、滞在期間の長期化が進行している。なかでも礼文島は、こうした個体数の増加・滞在期間の長期化が顕著な地域であり、現在では周年にわたる生息が確認されている。
本種は海洋生態系における高次捕食者として重要な位置を占めると考えられるが、一方で漁獲物の食害等、漁業との軋轢を生じており、近年における来遊数の増加は、こうした軋轢をより一層深刻にするものと考えられるしている。漁業は礼文島における基幹産業であり、漁業への打撃は地域全体へ波及する重大な問題となる。このような状況に対し礼文島では、2010年から、漁業被害の軽減を目的とした本種の有害捕獲駆除が開始された。しかし、本種の海洋生態系における位置付け、摂餌生態および漁業被害の実態など、被害対策や保全管理に必要な情報が不足している。
そこで本研究では、礼文島に来遊するゴマフアザラシの詳細な食性を明らかにすることを最終目的とし、有害捕獲駆除によって得られたゴマフアザラシの胃内容物分析と、安定同位体分析を行なったい、安定同位体による食性分析への応用、海洋生態系の位置付けを明らかにすることを試みた。