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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-247

コイ科唯一の遡河回遊魚:ウグイの回遊パタンとその要因

臼井 平*(北大 環),黒木 真理(東大 総博),高井 孝太郎(北大 環),小泉 逸郎(北大 創成)


季節移動(Migration)は、鳥の渡りやヌ-の大移動など大規模で謎めいたものが多く、生態学の古典的テ-マとなっている。魚類においても、サケやウナギをはじめとして、遡河回遊、降河回遊、両側回遊魚といった海と川とを行き来する魚種が数多く知られており、浸透圧調整や捕食圧、長距離移動などの様々なコストをかけてMigrationをおこなう理由に関して現在でも活発な議論がおこなわれている。

回遊魚の中でも特にサクラマスのように、同種内で降海型(Migratory type)と残留型(Resident type)という二つの生活史(Partial migration) をもった魚類は非常に興味深い。これまでに生活史二型が生じる要因について多くの研究が存在し、仔魚期の成長率、性差、遺伝的変異、種間競争、緯度におけるFood Availabilityの違いなどが考えられてきた。

サクラマス同様に、ウグイもまた降海型と河川型の2つの生活史をもっている魚種である事が知られており、さらには世界で唯一、遡河回遊性を持ったコイ科魚類であり極めて珍しい魚種である。しかし、そのような特徴を持ちながら、生活史に2型が生じる要因に着目した知見は非常に少ない。

ウグイは幅広い緯度で分布しているため、大規模な緯度をまたぐ研究が可能である。また、資源量が極めて豊富であるためサンプリングが容易である。さらに大規模な放流がおこなわれていないため、遺伝的な汚染を受けていない個体群である。したがって、ウグイは遡河回遊性(Anadromy)の進化を解明するには最適な生物である。

そこで、本研究では日本各地で採取したウグイを用いて、耳石微量元素分析による各緯度における降海履歴の有無、遡河回遊型と淡水型との成長率の比較などをおこない、ウグイの生活史2型が生じる要因を明らかとする。


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