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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-248

生息域の違いがニホンウナギの銀化年齢と体サイズに及ぼす影響

須藤竜介, 福田野歩人, 青山潤, 塚本勝巳(東大・大海研)


降河回遊性の通し回遊魚であるニホンウナギは、黄ウナギとして成長期を過ごした後、銀化変態し外洋の産卵場へと旅立つ。通し回遊魚の多くは回遊型の多型を持つことが知られており、ニホンウナギも河川に遡上せず一生を海で過ごす個体がいることが明らかとなってきた。一般に、温帯種のウナギ属魚類とって、汽水域は淡水域に比べ高成長・低生残であるとされている。したがって、成長期を淡水域で過ごすか、汽水域や海水域で過ごすかは、銀化年齢や体サイズなどの基礎生物学的特性に影響を及ぼすものと予想される。そこで本研究では、汽水域の浜名湖と淡水域の流入河川で採集した雌186個体と雄66個体を採集し、耳石微量元素分析により回遊型を決定した後、銀化の有無・体サイズ・生殖腺重量・眼径長・胸鰭長・消化管重量・年齢に関して調べた。

耳石微量元素分析により、淡水域の河川にいた「川ウナギ」と、汽水域の湖内にいた「湖内ウナギ」の存在が確かめられた。黄ウナギと銀ウナギの各種生物学的特性を調べたところ、回遊型によらず、黄ウナギに比べ銀ウナギは生殖腺が発達し、眼径と胸鰭の増大が見られ、消化管は退縮していた。各種生物学的特性を回遊型間で比較したところ、雌の胸鰭以外に違いは認められなかった。次に成長率を調べたところ、雌雄ともに川ウナギは湖内ウナギより低成長であった。銀ウナギの年齢と体サイズを雌雄間で比較したところ、川ウナギと湖内ウナギともに雌が雄に比べ大型であった。次に、回遊型間で比較したところ、雄では年齢に差は見られなかったが、体サイズは湖内ウナギが川ウナギより大型であり、雌では湖内ウナギが川ウナギに比べ若齢・小型であった。以上より、銀化に伴う形態変化は生息域の別なくほぼ同様の過程を経るが、体サイズや年齢が生息域の影響を強く受け、その影響は雌雄で異なっていることが明らかとなった。


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