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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-088

サラワク州ランビルヒルズ国立公園におけるShorea属樹種の遺伝構造と遺伝子流

*名波哲, 原田剛, 松山周平, 伊東明(大阪市立大・理), Sylvester Tan, Bibian Diway, Lucy Chong(Sarawak Forestry Corporation), 山倉拓夫(大阪市立大・理)


現在,演者らは,東南アジア熱帯雨林の主要構成種であるフタバガキ科樹種について,個体群の空間的遺伝構造とその形成要因の調査を進めている.ここでは,主に甲虫によって花粉媒介されるShorea属樹種についての調査結果を報告する.

マレ-シア連邦サラワク州ランビルヒルズ国立公園に設置された52 ha調査区において,胸高直径30 cm以上の個体を繁殖可能個体と見なした.全ての繁殖可能個体の生葉からDNAを抽出し,マイクロサテライト解析により遺伝子型を決定した.また,2009年に開花した母樹の樹冠下から果実を収集し,遺伝子型を決定した.国立公園から約10 km離れた択伐残存林においても,同様の調査を行った.結果を,国立公園と択伐残存林で比較することにより,Shorea属樹種の遺伝子流動に対する森林伐採の影響を考察した.

個体群の空間的遺伝構造は明瞭であった.すなわち,空間的な距離が近い個体同士は,遺伝子型が似ている傾向が有意であった.これは,飛翔距離が短い甲虫に花粉媒介されること,重力および風による種子の散布距離が短いことによるのかもしれない.次に,国立公園と択伐残存林の間で,送粉距離に大きな差は見られなかった.原生状態に近い森林において,もともと送粉距離が短い樹種では,森林伐採の影響は,強くは現れないことを意味するのかもしれない.


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