ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-091
*永光輝義(森林総研),二村典宏(森林総研)
雌雄異株のヤナギ属(Salix)とゲノム構造がほぼ同じポプラ属(Populus)では、ゲノム配列が解読され、第19連鎖群の端に組み換えが抑制された雌ZWと雄ZZの性決定領域が示唆されている(Yin TM 2008, Genome Res 18:422-430)。また、タチヤナギS. subfragilisの両性変異株が北海道で発見された(倉橋昭夫2001, 北方林業53:36-383)。そこで、この両性変異がどのように遺伝し、どのような性決定様式を示唆するのか、さらに、両性株で生じた自殖子孫を用いて近交弱勢を推定するため、両性株を母樹とする自殖と別の両性株との他殖、雄株との他殖の子について4年間の性表現と成長量を測定した。
その結果、両性株の自殖では両性が半数で雌雄均等、別の両性株との他殖では両性が3割で残りは雄に偏り、雄株との他殖では両性が2割で残りは雌雄均等となった。この結果は、両性の親から由来した同じ組み合わせの両性遺伝子型は両性を表現し、由来が違う組み合わせの両性遺伝子型は異なる性を表現することを示唆する。よって、ZW型性決定を仮定すると、性表現はZとWとの相互作用に依存すると思われる。
次に、幹の断面積と長さの成長量は交配親に依存し、両性株の自殖で最小、雄株との他殖で最大、別の両性株との他殖はそれらの中間となった。一方、成長量は子の性には依存しなかった。近交弱勢の大きさは、別の両性株との他殖または雄株との他殖に対する両性株の自殖の成長量の減少率となる。これらの減少率から、幹の成長量には、断面積で約60%、長さで約20%の近交弱勢があることがわかった。