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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-097

河岸の岩場に生育するユキヤナギの開花特性の経年変化

*芦澤和也(明治大・院・農),倉本宣(明治大・農)


街中に多く植栽されているバラ科の落葉低木ユキヤナギ(Spiraea thunbergii Sieb.)は、河岸の岩場に自生している。岩場に生育する個体群を対象として、現在までに種子発芽特性や生育地特性などを明らかにしてきたが、開花特性については未解明な部分が多かった。そこで、本研究では、2007年9月の台風9号の出水時に冠水した多摩川の本種個体群において、本種がどのように開花するかを2008年から2010年にかけてモニタリングすることにより、本種の基礎的な開花特性と経年変化を明らかにすることを試みた。

東京都西多摩郡奥多摩町寸庭地先の右岸の岩場における100個体、青梅市沢井地先の左岸の岩場における34個体、沢井地先の右岸の岩場における21個体、および、青梅市大柳町地先の左岸の岩場における20個体、の計175個体(4個体群)について、花の有無、着花数、最大枝長、地上幹数、および、マイクロハビタット(比高、根元のコケの有無など)を調査した。調査は2008年、2009年、2010年の4月に実施した。本調査地において、左岸は南向き斜面であり、右岸は北向き斜面であった。

南向き斜面である左岸の2個体群では、2008年に比べて、2009年に着花個体の割合が減少した。一方、北向き斜面である右岸の2個体群では、2008年から2010年にかけて、着花個体の割合が増加し続けた。また、開花数については、右岸の2個体群では、2年連続で開花数が増加した個体が多かった。沢井左岸の個体群の多くの個体は、着花数が2008年から2009年にかけて増加し、2009年から2010年にかけて減少した。南向き斜面と北向き斜面で開花状況が異なることから、光環境が本種の開花に影響を与える可能性がある。


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