ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-099
*井出純哉,後藤麻美(久留米工大・工)
総状の果序をつける植物では、一般に果実サイズは果序の基部のものが大きく先端に向かうほど小さくなる傾向があることが知られている。植物の中には風散布のための器官を持つ果実をつける種類も数多く存在するが、そのような植物が総状の果序をつける場合、風散布器官の大きさが果序内の位置によってどのように変化するのか、そして種子が散布される距離がその種子の果序内での位置によって変わるのかどうか、ということについては余り知られていない。そこで、翼果が総状になるシナサワグルミを用いて、果実サイズの果序内変異を調査した。シナサワグルミの実には二枚の翼があり、風によって種子散布されることが知られている。
2010年の秋に久留米工業大学の敷地内に生えているシナサワグルミの木から果序を採集した。果序は基部・中央部・先端部に三等分し、各部の翼果の大きさと重さを測定した。その結果、翼果の大きさは先端部のものだけ小さいことが明らかになった。特に、先端部の実では翼の幅が狭くなっており、そのために翼荷重が基部や中央部の実に比べて大きくなっていた。従って、先端部の果実は遠くまで散布されにくいのではないかと考えられた。