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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-102

胚珠親側の交配システム(自殖or他殖)が雑種形成の成功を左右する

*安元暁子(Zurich大・植物,京大・生態研セ), 岩永廣子(京大・農), 清水理恵(Zurich大・植物), 工藤洋(京大・生態研セ), 清水健太郎(Zurich大・植物)


雑種形成は植物の多様性増加に寄与した異質倍数化による種分化が起きる上で必須のイベントである。しかし、雑種形成の起きやすさを左右する要因についてはその重要性にも関わらず不明な点が多い。親種における、自家不和合性のメカニズムの有無や花柱長の種差、交配システムの違い(自殖or他殖)などが寄与すると言われるが、それらの相対的な重要性も良く分かっていない。

Cardamine属は200種以上の種から成る大きな属で異質倍数体種を多く含み、雑種形成が属内の多様性増加の主要な原動力と考えられる。属内の種は、閉鎖花のような小さな花で自殖を行う種から、虫媒の大きな花で他殖を行う種まで、多様な花形態を示す。また、自家不和合性から自家和合性が独立に4回進化したとも示唆されている。この属は雑種形成に影響する要因を調べる上で理想的な材料である。

Cardamine属植物の13種(2倍体7種、異質倍数体6種)で網羅的な相互交配実験を行った。他殖種が母親だと雑種の果実は発達しないが、自殖種が母親だと多くの掛け合わせで雑種種子が発達し、中絶された。母親種の交配システム(自殖or他殖)が雑種形成の成功を左右する要因だと考えられる。またC.parviflora(自殖)が母親だと、系統的に近いC.impatiens(自殖)とC.leucantha(他殖)が父親種の場合にのみ雑種種子は中絶されずに完熟した。母親側を固定すると、系統的な近さが雑種形成の成功に影響すると考えられる。加えて、C.parviflora、C.impatiens、C.leucanthaの相互交配から、母親種の交配システム(自殖or他殖)が系統的な近さよりも重要な要因であることが示唆された。


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