ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-122
青柳亮太(京大・生態研)*,今井伸夫(京大・農)・北山兼弘(京大・農)
現在ボルネオ熱帯林の多くは木材生産林であり、内部では撹乱強度の異なるパッチがモザイクに分布している。重機による強い撹乱を受けた場所ではパイオニア樹木(マカランガ属)が侵入し、局所的なパッチを形成する。森林が原生的な植生に回復するためにはこのマカランガパッチに原生林の優占種(フタバガキ科)の実生が新たに加入することが必要である。しかし、強度の撹乱を受け、原生林とは異なる機能群の樹種が優占した箇所では土壌栄養、光、水分、生物的環境が異なることが予測される。そこで本研究では、フタバガキの実生密度と新たに加入した実生の動態をマカランガパッチ内と外部で比較し、伐採林の更新パタ-ンを調べた。また、食害強度と林床環境の比較により更新の規定要因を検討した。
2009年にマレ-シアサバ州のデラマコット森林保護区において伐採後15年以上が経過した森林に4haプロットを設置し、10m×10mサブプロット内の直径30cm以上のマカランガとフタバガキ実生(直径1cm以下)密度を記録した。また 2010年3月にこの地域で大規模な一斉開花が起こり、プロット内でフタバガキの一種が果実を散布したため、新規加入した実生の動態を6ヶ月間調べた。 GLMMによって一斉開花前の実生密度と新規実生の成長・生存率を説明する要因を解析したところ、マカランガパッチ内で、実生密度が少なく新規実生の成長・生存率も低下していた。 双葉への食害強度はマカランガパッチ内と外部では差が見られなかった。 林床の土壌栄養塩濃度(N、P)・土壌水分含量、相対照度を調べたところ、マカランガパッチ内では外部に比べ土壌栄養塩濃度が有意に小さく、その他では差が見られなかった。
以上の結果から、土壌栄養塩加給性の低下によってマカランガパッチへの実生の更新が長期間制限されている可能性が示唆された。