ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-200
*澄川元晴,大窪久美子,大石善隆(信州大・農)
近年,農業形態の変化や基盤整備に伴い,水田地域をハビタットとしてきた生物種が減少・絶滅していること明らかになってきており,これらの生物群集構造と環境要因との関係を解明することが保全を考える上での課題となっている.本研究では,立地環境が異なる水田地域において,水田生態系における代表的な昆虫群である直翅目の群集構造と環境要因との関係を解明し,保全策について検討することを目的とした.
調査は2010年9月から11月にかけて,長野県上伊那郡の立地環境・整備状況が異なる5箇所の水田地域(中山間地・未整備の小屋敷及び山室,市街地・未整備の御子柴,中山間地・整備の上原,市街地・整備の狐島)に設定した500m径円内を対象として行った.円内から代表的な10畦畔を選定し,各畦畔上に1m×1mのプロットを3箇所設置した.
直翅目群集の調査はプロット毎に目視法およびスウィ-ピング法,踏み出し法,トラップを用いて行った.同時にプロット内の植生調査,範囲内の土地利用調査を行った.
3回の調査を通じての総出現種数は13種,総出現個体数は422個体であった.調査地毎の出現種数と出現個体数は,中山間地・未整備の山室と市街地・未整備の沢尻で各々9種133個体,9種126個体を記録したが,山室と同じ中山間地・未整備である小屋敷では6種57個体に留まった.中山間地・整備の上原では9種69個体,市街地・整備の狐島では6種37個体であった.全地域の共通種はオンブバッタとコバネイナゴ,エンマコオロギの3種であり,未整備地域にのみコバネヒメギスとシバスズ,小屋敷にのみハネナガフキバッタが特徴的に出現した.発表ではこうした群集構造と,畦畔植生及び土地利用状況との関連性について,既往の研究結果との相違も含めて考察する.