ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-202
*長谷川元洋(森林総研・木曽),太田藍乃(横浜国大),壁谷大介,岡本透,齋藤智之,西山嘉彦(森林総研・木曽)
高海抜地のカラマツ林においては、森林の多面的機能の発揮を目的として強度の間伐や、侵入樹種利用による針広混交林誘導施業が行われている。本研究ではこの様な針葉樹人工林における広葉樹の混交がトビムシ群集に与える影響について着目している。八ヶ岳山麓の標高1200-1400mの地点において、胸高断面積割合において広葉樹(シラカバ、ミズナラ等)の混交度合が50〜80%であるカラマツ人工林5林分(混交林)と、カラマツの割合が95%以上である5林分(カラマツ純林)の合計10林分で調査を行った。2006-7年の秋に各林分内に30x30mのプロットを設定し、土壌コアを用いて林床リタ-及び、表層土壌(深さ5cm)を採取した。採取したサンプルから、マクファ-デン装置を用いて土壌動物を抽出し、そのうちトビムシ群集の種同定を行った。
トビムシ総個体数、種数を比較した結果、トビムシ総個体数が、カラマツ純林で若干多いものの、カラマツ純林と混交林との間に有意な差はみられなかった。トビムシ群集の組成の違いに及ぼす環境要因の影響を、調査地点間の距離の影響を除去した冗長分析(partial RDA)で解析した結果、カラマツ純林もしくは混交林という林冠木のカテゴリの違いは、有意な要因として選択されず、単子葉草本の量が群集組成の違いを説明する要因として抽出された。このような結果から、トビムシ群集に与える影響は林冠木よりも、下層植生の影響が大きいことが推察された。また、全体の個体数や種数が変わらない要因として、調査地とした八ヶ岳の中標高地点の全般で、永らく草地としての利用がなされており、近年の植生の影響が薄かったこと等が考えられる。