ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-208
*岩崎雄一(東工大・理工), 梁政寛(東工大・工), 吉村千洋(東工大・理工)
流況は河川生態系の構造や機能を決定する主要な要因である。しかしながら,ダム建設などによる人為的な流況の改変が指摘されており,今後も人口増加による農業用水や工業用水の増加に伴い河川流量が減少し,また気候変動による降雨パタ-ンの変化が流況に影響を及ぼすことが予想されている。そのため,河川生態系保全の観点から,流況の変化が世界河川の種多様性にどのような影響を及ぼすかを定量的に予測することが求められている。このような要請のもと,Xenopoulos et al.(2005)は河川流量の減少に着目し,全球レベルで淡水魚類の種数が最大75%減少すると予測し,この結果はミレニアム生態系評価にも利用されている。
河川の流況は年間を通じた流量変動により特徴づけが可能であり,Richter et al.(1996)は生物の生息に重要と考えられる流況指標として「強度・頻度・時期・期間・変動性」の5つの要素を提唱している。しかしながら,前述したXenopoulosらのモデルでは平均流量以外の流況特性は考慮されていない(例えば,流量の変動性や洪水の頻度)。また,世界の河川において魚類種数と流況の関係を調べた研究は少なく,いずれも平均流量以外の流況特性と魚類種数の関係については調査されていない。
そこで本発表では,世界河川を対象に取得した魚類種数と日平均流量デ-タを用いて,上述の流況指標と魚類種数の関係を評価した結果を紹介したい。