ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-214
*伊藤洋,赤坂宗光,中川恵,白石寛明,高村典子(国立環境研)
現在ではほとんど失われた氾濫原湿地に生息する生物群集の一部は、ため池で存続している。しかし、ため池生態系もまた、水質悪化や外来生物の侵入などの様々な環境ストレスに曝されており、多数の生物種が絶滅の危機に瀕している。本研究は、兵庫県のため池21池に生息する魚類、甲殻類、昆虫類、貝類、ミミズ類などを対象とし、その種多様性が環境ストレス要因から受ける影響についての統計解析を行った。昆虫類については、大型昆虫類と小型昆虫類(主にユスリカ類)の生態的差異を考慮し、これらを分けて扱った。解析に含めた環境ストレス要因および環境要因は、侵入生物の有無、物理要因、水質、農薬、植生など、計52項目である。統計解析の結果、少なくとも外来魚の侵入の有無(ブル-ギル、ブラックバス)、殺虫剤濃度(BPMC)、コンクリ-ト護岸率が、総種数と負に相関することが検出された。特に、外来魚と殺虫剤については、大型昆虫類の種数との強い負の相関が検出された。
本研究はさらに、環境ストレス要因がため池の食物網構造に与える影響を解析するために、食物網を推定する簡便な手法を考案した。この手法は、各生物種の捕食、被食に関係する形態情報を文献収集しデ-タベ-ス化することで、調査地で確認された生物の種名のみからそれらの捕食被食関係を推定し、食物網全体を推定するものである。本発表では、この手法による食物網解析の結果についても報告する。