ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-215
*江副日出夫(大阪府大・理)
生物の適応的な行動の変化が群集動態において重要な役割をもつことは広く認識されるようになっている。この研究では、資源・資源を食べるギルド内被食者(以下「被食者」)・資源と被食者の両方を食べるギルド内捕食者(以下「捕食者」)の3種からなるギルド内捕食系において、適応的な被食者の生息地選択と捕食者の餌選択がこの系の動態にどのような影響を及ぼすかを、微分方程式モデルを用いて調べた。捕食者は資源・被食者各々の餌に対してII型の機能の反応をし、質の良い餌である被食者は常に捕食するのに対して、悪い餌である資源は被食者密度がある閾値より低いときのみ食べるとする(餌選択)。また、被食者は資源と捕食者のいる生息地(餌場)と資源も捕食者もいない生息地(避難場所)を自由に行き来し、採餌による利益が捕食によるコストを上回るときのみ餌場に滞在するとする(生息地選択)。ただし、餌選択も生息地選択も最適な値に即座に変化するのではなく、有限時間で連続的に変化すると仮定する。餌選択も生息地選択も仮定しないモデル(モデル1)・餌選択のみを仮定したモデル(モデル2)・生息地選択のみを仮定したモデル(モデル3)・両方を仮定したモデル(モデル4)の動態を数値計算して互いに比較した結果、すべてのモデルにおいて、資源の環境収容力Kを大きくしていくと、最初のうちは平衡状態が安定だが、Kがある閾値を超えると振動が生じた。この状況において、モデル1と2ではKが大きくなるほど振動が大きくなり、各々の種の密度の下限は0に近づいた。一方、モデル3と4ではKが大きくなっても振動は小さいままで、どの種の密度も0に近づくことはなかった。このことから、この系の存続にとっては捕食者の餌選択よりも被食者の生息地選択(あるいは捕食者回避)が重要であると考えられる。