ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-218
*渡辺展之,渡辺修(さっぽろ自然調査館),堀繁久(北海道開拓記念館),?澤暁(環境省釧路環境事務所)
飛翔能力の低いオサムシ科甲虫群集は、これまでも環境指標として用いられており、自然再生事業において森林の再生状況を動物群集の面から把握する上でも有効となりうる。そこで道内2地域の周辺環境が異なる孤立林と丘陵林の広葉樹二次林において、オサムシ科甲虫を用いて、森林環境の評価法について検討した。孤立林では、0.1-約1700haまでの異なる森林面積を持つ林分17箇所を対象とした。丘陵林は連続して森林が分布する場所で、0-80年までの林齢の異なる林分がパッチ状に分布する17箇所の林分を対象とした。初夏と夏の2回、ピットフォ-ルトラップを用いてオサムシ科甲虫の調査を行ない、種や種群ごとに個体数を求め、現存量についても算出した。また、各調査地の森林の環境変数として、孤立林では森林面積・胸高断面積合計、丘陵林では胸高断面積合計・樹齢・ササ類被度・自然林率(半径100m内の自然林の割合)を用いた。
全体で62種が出現し、孤立林は49種、丘陵林は36種だった。生息環境タイプは森林性が20種、草地性が31種、湿地性が11種だった。孤立林と丘陵林の共通種は26種で、うち森林性は14種だった。森林性のオサムシ科甲虫について、種数、個体数、現存量と森林環境変数との関係を検討した。孤立林では、種数・個体数・現存量のいずれも、森林面積と相関のある種や種群が多く見られた。一方、丘陵林では、種数や個体数とはほとんど相関は見られず、優占種の現存量で胸高断面積合計・樹齢・自然林率と相関が見られた。孤立林では周囲から侵入できないため、絶滅しやすく種数に反映されやすいが、丘陵林では周辺からの侵入が可能で種数へ影響は小さく、優占種現存量での評価が適切と考えられた。