ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-229
*櫻井 龍太,馬谷原 武之,河野 英一(日大・院・生物環境)對馬 考冶,(日大・生物環境工)
近年,外来貝類が在来貝類の生息地で大量繁殖している。しかし,外来淡水巻貝の摂食が在来淡水巻貝等の生育へ与える影響については,十分に解明されていない。淡水巻貝は,歯舌によって剥ぎ取れる付着物を摂食し,生育していると考えられているが,巻貝の胃内容物による食性解析は困難である。
本研究では,在来カワニナの一種(Semisulcospira sp)と外来種コモチカワツボ(Potamopyrgus antipodarum)の窒素・炭素安定同位体比から両者の食性を検証し,比較した。調査地は神奈川県鎌倉市とし,上流部に緑地保全区がある二俣川支流と周囲に市街地がある神戸川を中心にカワニナ・コモチカワツボ等の巻貝,それらを利用するホタル,他生物・河床の付着物・河川水のサンプリングを毎月行った。
結果,各調査地点の毎月の水質はほとんど変動がなかった。窒素・炭素安定同位体比は,二俣川上流部と二俣川下流部・神戸川のカワニナ属に有意な差異が認められ,同一地点で両者の混在する二俣川下流部・神戸川のカワニナ属稚貝(殻高:2mm-10mm)とコモチカワツボも有意な差異があることから,カワニナ属とコモチカワツボの食性は異なると推測された。また,炭素安定同位体比から二俣川上流部のカワニナ属は落葉などの陸起源有機物を主食とし,窒素・炭素安定同位体比から二俣川下流部・神戸川のカワニナ属は河床中のデトリタス・藻類を主食と推測した。同様に,窒素・炭素安定同位体比から,コモチカワツボは河床中の底生微細藻類を主食としていると推測した。
これらのことから,カワニナ属とコモチカワツボは付着物を主食とする食性があり,付着物中の藻類をめぐる資源消費型競争の可能性がある。今後,カワニナ属とコモチカワツボの年間の食性変化を明確にした上で,カワニナ・コモチカワツボと利用生物間の関係を明確にする。